始まった。
それでも待ち合わせ時間には間に合う。
何の焦りもなかった。
こっちが遅くなったため
七菜子さんは先に着いていた。
「すみませーん。遅くなりました。鏡の前で格好つけてたら遅くなりました(笑)」
「いいですよ。行きましょう。」
「はい。」
自分に表現力があれば、この状況を
もっと上手に描写できると思う。
七菜子さんのいいですよは、語尾に(笑)
がつくような冗談ではなく、いいですよ。
と言い切りの形だった。
待ち合わせには10分前に着いたはずだ。
遅刻ではないため、遅れますとは連絡をしなかった。会うと2度目は原因不明で豹変された、過去に2度目で終わった出会いがよみがえる。
「電車1本乗り遅れてしまって。ごめんなさい。七菜子さん今日も早いですね。」
「待たせるのは嫌なので。」
「そうでしたよね。」
うーん。ツンという言葉があてはまるか。
「もしかして七菜子さん何か怒ってます?俺遅かったですか?」
「いえ、怒ってないですよ。ただ。」
「ただ?」
「私一昨日から始まったので。
それでかもしれません。」
「そうなんですね。」
あれが始まった。に対するリアクションとして正しいものを選べ。
という選択肢があったら、この一言を正解としていただきたい。